割り勘とホフステードモデル 

その⑤
 

昨日に引き続き、その⑤をお送りします。以下、私とA 君の会話の続き。。

 
  • 私:『そう思うよね~~。笑。でも、そこがポイント。 A 君が中国人だったら、まあかなりの確率で、『 OK !いいですよ~!』ということになる。 中国人にとって の 『私』とは 、無論個人差はあるけれども、私自身 、或いは自分の妻子というレベルではなく、往々にして内集団の全ての人が含まれちゃう事もある わけ。だから、 この様に二つ返事で OK にも十分なり得るんだ 。 さっき言った様に、車持っているのにそれを提供しないっていう発想は基本的にないんだよね 。 』

  • 私:『 まあ 、中国人の日々の生活って一事が万事こんな感じで営まれている訳なんだ。。ところが、A 君も既に薄々気づいているかもしれないけれど 、こういう事が無意識の中で行われているとどんな事が起こると思うかな? そう、中国においても法律上の考え方や規定とはどうしても 、乖離、衝突が起きてしまうんだ 。ご存じの通り、世界の大半の国の法体系は基本的に欧州が起源となっているよね?大陸法やコモンローという区別はあっても、どちらも 『個人主義』 の文化から生まれたもの。ちなみに日本も中国もベースは大陸法。だから、『個』とか『私』が意味する概念が極めて限定的な個人主義の文化で生まれた法体系が、そもそも中国(を含む集団主義文化の国々)にうまくフィットするはずがないんだ 。。。 』

  • A君 :『つまり、中国では伝統的な人の価値観や行動様式とは相容れない法体系の下で暮らしているってことになるの?』

  • 私:『 ざっくり言えばそういう事になるね。無論 、中国流に種々かなりアレンジはされているけど ね。。ところで、また一つ極端なたとえ話になるけど、もう一つ。例えばさっき話が出たインサイダー取引。A 君はある近々上場予定のある未公開株に関する情報を持っているとするよね。当然ながら家族にさえ そうした情報は 話してはいけない。それは中国の法律でも同じ。でも、伝統的な中国人の感覚では『私の中に留める』 とは 、往々にして『私一人の中に留める』 という意味にはならない訳。。だから、法律では禁止されている事は一応 知識としては知っていても 、 どうしても 感覚がついていかずに、半ば 無意識の内に 法に触れてしまう事も多いというのが 実情なんだ 。。勿論個人差はあるけどね。。よって、やっている事は同じでも、日本人でインサイダー取引をする人は、もっと罪の意識を認識しつつ、いわば確信犯でやってしまう人の比率はずっと中国より高いと思うよ。 』

  • A君 :『中国は未だに法治主義が根付かず、人治主義の国だって聞いたことがあるけど、そういう背景もあるんだね?』

  • 私:『人治主義と言われる全ての理由がこうした理由ではないけれど、この『私 』 の 範囲 が いわゆる 欧米諸国とは大きく異なる事が大きな理由の一つとは言えるね。。ただ、僕は 20 年位前に四国の片田舎の市町村をぐるぐる廻っていわゆるドブ板営業した経験があるんだけど、多少の程度の差こそあれ、日本の田舎もこの辺りの事情はあまり変わらなかったな。。良くも悪くも極めて密な人間関係を基盤にヒト、モノ、カネ、コネが 町 全体をぐるぐる回っていて 、コンプライアンス的にはこれは危ういなあと思う場面に何度も遭遇したよ。日本も、欧米諸国に比べれば随分と集団主義的な傾向が強い国と言えるから 、まあこれも当たり前 と言えば当たり前だけどね 。まあ余談ながら、この仕組み自体が、日本市場や中国市場に進出したいと考える欧米企業にとって非関税障壁となり、結果的に国内産業の保護に役立っているという側面は確かにある。。笑。この話をし始めるとまたどんどん話がそれてしまうので、ここでやめておくよ。 』

  • A君 :『そういえば、君は中国にも駐在した経験があるって言っていたよね?やっぱり その辺りで苦労したりしたの? 』

  • 私:『そりゃあ苦労したよ。。 工場建設や 研究所建設 の様な、いわゆる箱物プロジェクトの推進 を沢山担当していたのだけれど、そうすると、やっぱり いろいろと カウンターパートの内集団絡みのしがらみにもあれこれ遭遇するわけ。。そんな中でも、こちらは日系企業だから現地政府や現地企業と同じ(緩い)基準では絶対に行動 してはならない 。。『この位、まあいいんじゃない?』という悪魔のささやきとの闘いの日々だったな。。 。』

  • 私:『 まあ纏めると 、 A 君に理解して欲しかったのはこういう事なんだ。日本人の一般的イメージでは、中国は汚職あり、口利きあり、なんでもありの腐敗大国ってイメージを持っている人がかなりいるんだけど、決して水戸黄門に出てくる悪代官 や桔梗屋 みたいに性根が腐った人間がそこら中にゴロゴロいるというわけでは無いという事。 つまり、別に取り立てて モラルが低いという訳ではなく、 あくまで長い歴史を通じて培ってきた人と人との距離感が欧米とかけ離れている事 が原因で、『無意識』の内に、『法律上では犯罪とされる行為 』 に及んでしまう人たちも多いという事実 があるという事なんだ 。』

  • A君:『なるほどなあ。。表面的に見えている事象 自体 は同じでも、そういう背景を知っている の といない の とでは見え方が違うね。。』

  • 私:『ただ、難しいのは、仮に中国がある程度の口利きも賄賂もそれは中国の文化だと言ったところで 、欧米の個人主義の価値観やシステムが支配するこの世界では、そんな理屈はまるで通らないわけ。笑。 だから、思いっきり集団主義の中国はもとより 、集団主義か個人主義か 、どっちとも言えない日本でさえも、どうも押し付けられた感を感じつつも、欧米のやり方に 合わせざるを得ないのが現状なんだ。 』

  • A君:『企業や経済のグローバル化で、どんな分野でも何かって言うとグローバルスタンダードって言葉が独り歩きしているけど、その実行となると簡単じゃないって事か。。 。』
    私:『その通り 例えば、グローバルでのコンプライアンス体制を構築すると言っても、ある同じ違反をするに当たって、その行為を罪の意識を十分感じつつ、どうしても 誘惑に 負けて 違反する人の比率が多い国と、なんでそれが違反なのかも感覚的に理解できないまま違反する人の比率が多い国とでは、具体的な啓蒙の仕方や仕組みづくりも全然違ってくるよね。つまり、その グローバルスタンダード(と言っても実際には欧米基準)に対して、対象国が文化的にどの様にどの程度乖離があるかという事を、表面的な事象だけでなく、その違反を起こす背景 心理のところまで理解して対策を講じていかないと、全ての対策が絵に描いた餅になってしまいかねないと思うんだ。』

  • A君 :『なるほどね~~。。結構中国に対して誤解していたところが多かったかも。勉強になったよ。でもさあ、全く違う話で恐縮なんだけど、中国のコロナ対策ってすごいよね。人々をGPS で管理して、いつどこで何をしているか全部把握しているんでしょ?感染対策としては優れていると思うのだけど、あれはひどいね。完全に人権無視だよ。。怖ろしいよな。。日本では考えられないよ。』

  • 私:『中国は人権無視か。。笑。これも中国に対してのあるあるの誤解ネタだね。。』

  • A君 :『ええ どういう意味??』
 

続きはまた明日。。