その2 日本人の「きれい好き」を6次元モデルで見る

 
海外の普通の生徒を家族の一員として受け入れる交換留学プログラム。
サポート現場から見えてきた日本文化の特徴とは?

|日本人の「きれい好き」の原点

 

2018年のサッカー ワールドカップ。日本は試合終了直前、強豪ベルギーに逆転ゴールを許し、惜しくもベスト8入りを逃しました。試合終了後、意気消沈しながらも、ゴミ袋を片手に黙々と客席の清掃をする日本人サポーターの姿に、海外メディアやツィッター上では「試合に負けても彼らは敗者ではないことを証明した」(The SUN) など賞賛する声が溢れました。

 

では多くの日本人が自認するこの「きれい好き」は、一体どこから生まれたのでしょうか?

 

民俗学者の新谷尚紀氏によると、その鍵は日本の温暖湿潤気候にあると言います。紀元前950年ごろ気候に適した水稲栽培の始まりとともに、人々は常に水田をきれいに保つ必要がでてきたこと。また湿気でカビや病原菌が増えるのを防ぐために拭き掃除や手洗いの習慣を持つようになったこと。こういった環境から生まれた習性が「禊(みそぎ)」「お祓い」といった信仰行事にも繋がっているとのこと。氏は更に次のように言います。
きれいにしておくと安心できる。きれいにしておかないと不安で、不潔を好む邪霊が寄りついてきて、何事もうまくいかない気がする。そんな心理が日本人にはあるんです」*
 

葛飾北斎「富嶽三十六景 隠田の水車」

葛飾北斎「富嶽三十六景 隠田の水車」

 

|私の「きれい」は あなたの「汚い」

 

さて、この心理的に「不潔を怖れる」日本の一般家庭で、異なる衛生習慣を持つ留学生が生活する訳ですから、私たち支援ボランティアに多くの衛生関連の案件が舞込むことも、おそらく想像に難くないでしょう。どんな内容のサポートかを聞いてみたところ、その多くは「入浴」と「洗濯」をめぐる生活習慣の違いであることが分かります。

 

(あるアンケートによると支援員の8割以上が「衛生に関連したサポートを経験した」と回答)

 

一方で、在日外国人100人を対象にしたある調査**によると、「日本の風呂の習慣で驚いたこと」の第2位に家族でお風呂のお湯を替えずに、同じお湯を使うこと」がランクインしています。日本以外では浴槽入浴はあくまで「汚れを落とすため」に個人単位で湯を使うのが一般的。
以前我が家に短期で滞在することになったアメリカ人留学生に風呂場の使い方を説明したところ、「シャワーだけで大丈夫です」と頑なに浴槽入浴を拒まれたことを思い出します。また「風呂の残り湯で洗濯する」ことを不潔だと感じる人もいます。

 

つまり、衛生概念も文化の価値観に基づいた「主観的」なものなのです。

 

|不確実性を回避する文化

 

ホフステートの6次元モデルに「不確実性の回避」という指標があります。これは「人生に絶えずつきまとう『不確実なこと』を社会がどの程度避けようとするか」というもので、日本はこの尺度においても92という世界的に高い数値を示しています。

 

「不確実性の回避」の高い社会においては、「人生に絶えずつきまとう不確実性は脅威である」と考え、それを取り除くために「子ども達は汚いものやタブーについて厳しく教えられる」という傾向があります。

 

子どもの頃からの手洗い・うがい、学校での清掃活動、マスクの着用...
「きれい好き」な日本人の国民性は、このようにモデルでも裏付けられているのです。

 
日本の6次元指数

日本の6次元指数 出所 hofstede-insights.com