その3 日本人の「きれい好き」を6次元モデルで見る
~おばあさんは川で洗濯~

 
海外の普通の生徒を家族の一員として受け入れる交換留学プログラム。
サポート現場から見えてきた日本文化の特徴とは?

日本では「毎日お洗濯」が基本

 

前回のブログで書いたように,留学生とホストファミリーの間に入る支援ボランティアの多くが、衛生習慣の違いをめぐる課題を経験。その内トップ2が「洗濯」「入浴」です。今回は洗濯について考えます。

 

洗濯でよく耳にするのは「生徒が洗濯物を毎日出さない」というもの。我家に滞在していたヨーロッパ出身の生徒も真夏に制服のブラウスを数日に一度しか洗濯に出さず,しみついた汗の匂いや汚れが取れなくて困ったことがあります。「毎日出してね」と伝えるとしばらくは毎日出すのですが,その内また元に戻ってしまいます。部屋に溜めこんた着用済みの服を自分で洗濯させたことは、2度や3度ではありません。

 

ある調査によると20代~40代の子どものいる世帯の実に7割が「毎日洗濯している」と回答。日本人の「きれい好き」を象徴する結果となりました。日本の洗濯文化の原点は,桃太郎に出てくる「おばあさん」のように、豊かな急流の軟水を使い「少量をこまめに洗う」ことにあると言えます。
日本で戦後から普及している洗濯機は「渦巻き式」と呼ばれるタイプ。この方式のメリットは軽量で安価,強い水流を起こせるので洗浄力が高く,洗濯時間が短いことです。

 

まさに狭い日本の住宅事情にぴったりの渦巻き式洗濯機は、桃太郎のおばあさんが洗濯していた「川の急流」を家電で再現したと言えます。
 

 

日本は洗濯機もガラパゴス?

 

しかし世界に目を向けてみると事情は異なってきます。実はこの渦巻き式は米国や欧州ではほとんど見られません。

 

欧州で最も普及しているのは「ドラム式」。これは古代ローマ時代の公共の洗い場での「たたき洗い・踏み洗い」が原点になっているとか。特に欧州はペストの流行に苦しんだ歴史があることと,硬水の地域が多いことから,水を高温に熱して殺菌したり洗浄力を高めるニーズがあったとされます。

 

以前ある欧州の生徒の母親が書類に「(子どもにアレルギーがあり、発作を起こさないために)シーツを95度で洗ってください」というアドバイスを親切心(?)で書いたところ,日本での受け入れファミリーが見つからなかったという話を聞きました。互いの事情をすり合わせてみると,高温の湯でなくても頻繁に洗えば良いだけであることが判明し、無事ファミリーが見つかりました。私達は自分の環境に照らして相手の環境も同じだと思いがちです。

 

米国で普及しているのは「かくはん式」。大量に水を入れた「たらい」を火にかけて棒でかくはんしたのが原形と言われます。まとめ洗いに向き,洗濯時間がドラム式より短く,広い住宅事情にもマッチしています。このように洗濯機1つ見ても、自然環境・住宅環境・歴史など、多くの要素から影響を受けていることが分かります。

 
「日本は洗濯機もガラパゴス? 日米欧で方式なぜ違う」
日経電子版2012年 エンタメ裏読みWAVE
 
 

不確実性の高さから見た清潔の概念

 

米国でも欧州でも洗濯は週1回~数回が一般的です。特に湿度や気温が低い地域では,日本ほど毎日洗濯に出さなくても、汗のにおいは気にならないでしょう。これらの地域では「洗濯は毎日出さない」のが常識なのかも知れません。
ホフステートの6次元モデルに「不確実性の回避」という指標があります。これは「人生に絶えずつきまとう『不確実なこと』を社会がどの程度避けようとするか」というもので、日本はこの尺度においても92という世界的に高い数値を示しています。

 

「不確実性の回避」の高い社会においては、「人生に絶えずつきまとう不確実性は脅威である」と考え、それを取り除くために、不潔や危険に関する分類が厳密になる傾向があります。たとえ習慣に違いはあっても日本の夏は高温多湿。一緒に生活する以上、生徒達は「きれい好き」の生活習慣に合わせて努力する必要があります。