Hofstede 6 dimensional models

ホフステード6次元モデルとは

ホフステード6次元モデルとは?

「ホフステードの6次元モデル」とは、ヘールト・ホフステード博士がつくった国民文化の違いを相対的に比較できる指標であり、各国の価値観の違いを理解するためのツールです。国際経営で最も広く使われ、活用されています。

※ヘールト・ホフステード博士は、職場における価値観が文化によってどのような影響を受けるかについて研究し、世界で初めて各国の国民文化の価値観を視覚化したオランダの社会心理学者です。

ホフステード博士は、人間社会にある普遍的な6つの課題に注目しました。
その課題である、以下6つの次元が、6次元モデルのベースとなります。
各次元のスコアはCWQアセスメントによって数値化されます。
ホフステードの6次元モデルは、国民文化の指標ですが、アセスメントでは個人の文化的傾向を測ることができます。同じ国で生まれ育っても数値はさまざまです。
個人のスコアを知ることで、異なる文化的傾向をもつ人を理解し、橋を架けるのがCQです。

それでは、6つの次元について順番に説明していきます。

01

集団主義・個人主義

集団主義・個人主義とは、集団と個人どちらの利害が優先されるか

集団主義とは自分を集団の一部とみなす態度であり、個人主義とは自分を本質的に個人とみなす態度であるといわれています。
ホフステード博士は、内集団の利害が個人の利害より優先される社会を「集団主義社会」、個人の利害が内集団の利害より優先される社会を「個人主義社会」と呼び、以下のように定義しました。
「集団主義を特徴とする社会では、人は生まれたときから、メンバー同士の結びつきの強い内集団に統合される。内集団に忠誠を誓うかぎり、人はその集団から生涯にわたって保護される。
個人主義を特徴とする社会では、個人と個人の結びつきはゆるやかである。人はそれぞれ、自分自身と肉親の面倒をみればよい。」

個人主義の国・人の特徴

  • 成人すれば、自分と身近な家族だけの面倒をみればよい
  • 子どもは「私」という視点から物事を考えることを学ぶ
  • すべての人に対して同じ価値観が適用され、普遍主義的である
  • 自分の心の内を語る人が誠実な人とされる
  • 不法行為を起こすことは、罪の意識を掻き立て、自尊心を傷つける
  • 所有権は個人のものであり、子どもとも共有しない
  • コミュニケーションは状況に左右されにくい

個人主義の国では、子どもは核家族のなかで育ちます。
心のうちを語ること、真実を語ることが誠実な人間の特徴とされています。個人主義の人は、意見の衝突はさらに高次な結果につながると考え、明白で直接的なコミュニケーションをとります。

集団主義の国・人の特徴

  • 人は内集団のなかに産まれて、その集団に忠誠を誓うかぎり保護される
  • 子どもは「私たち」という視点から物事を考えることを学ぶ
  • 内集団と外集団では、価値観の基準が異なり、排他主義的である
  • 内集団のなかでは常に調和が保たれ、直接対決は忌避される
  • 不法行為を起こすことは、本人と内集団にとって恥であある
  • 資産は親族と共有する
  • コミュニケーションは状況に左右されやすい

集団主義の国では、たいていの場合、子どもは拡大家族のなかで育ちます。
集団主義の人は内集団の外には排他的な態度で接するようになり、内集団で調和を保つことを大切にした、間接的なコミュニケーションをとることが主流です。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。日本は「46」。
日本は自分たちを集団主義と思い込みがちですが、世界のなかでは真ん中です。
アングロサクソン諸国や北欧などと比較すると集団主義ですが、中国、東南アジア、中東、中南米などと比較すると個人主義がかなり強いのです。
昨今日本でも広がっているアクティブラーニングは、教師が一方的に教えるのではなく、生徒が自ら考え意見を発信するものです。これは、個人主義の国で浸透しているものです。
一方、集団主義の国では、自然にディスカッションが生まれることはありません。
グローバルビジネスを行う場合は、パートナーの国が個人主義か集団主義かによって、コミュニケーション方法を変える必要があります。

02

権力格差

権力格差とは、権力の低い人が階層と平等のどちらを重視するか

権力格差とは、「この世は不平等」という現実にどう向き合うかです。
ホフステード博士は、それを以下のように定義しました。
「権力格差とは、それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が平等に分布している状態を予期し、受け入れている程度」
要するに、子ども、生徒、部下など権力のより弱い人たちが、親、教師、上司など自分より強い権力を持っている人たちとの間の不平等や距離をどう受け止めるのか、ということです。

権力格差の小さい(参加志向)国・人の特徴

  • 人々の間の不平等は最小限にすべきであり、人は皆平等な権利を持つべき
  • 親は子どもを、子どもは親を平等な存在として扱う
  • 教師は生徒を、生徒は教師を平等な存在として扱う
  • 教師は生徒が自発的にふるまうことを期待している
  • 学習の質は、教師と学生との間のコミュニケーションと、生徒の優秀さによって決まる
  • 患者は医者を平等な存在として扱っており、積極的に情報を提供する

権力格差の小さい人とビジネスを行うときには、リーダーの周りをやる気にさせる影響力が鍵となります。

権力格差の大きい(階層志向)国・人の特徴

  • 人々の間に不平等があることは予測されているし、望まれている
  • 親は子どもに従順さを教える。親や年長者に対して経緯を払うことは一生にわたって続く
  • 生徒は教師に敬意を払う
  • 教師は教室で全主導権をとることが期待されている
  • 学習の質は、教師の優秀さによって決まる
  • 患者は医者を目上の人として扱っており、診療は短く、医者が主導権をとる

権力格差の大きい人は、権力の不平等を当然のこととして受け入れています。ビジネスでは、リーダーは畏怖の念を使いこなすことが成功の鍵となります。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。
日本は「54」。世界のなかでは中間です。
日本で知識創造を動かす鍵は、ミドル=中間管理職にあります。
トップとボトムに生じる矛盾を、絶えずタテ・ヨコに動いて解消する役割があるからです。
トップのビジョンを解釈して部下に伝え、ボトムの感覚をトップに提言することが求められます。
さらに、外的要因を考慮し、組織の課題解決や目標達成のシナリオを描き、実践に移すことまで期待されます。

03

不確実性の回避

不確実性の回避とは、未知の状況に脅威を感じる程度

不確実性の回避とは、不確実なこと、曖昧なこと、未知の状況に対して、脅威を感じるか気にしないかを表すものです。
ホフステード博士は、この次元について以下のように定義しました。
「ある文化の成員が、曖昧な状況や未知の状況に対して脅威を感じる程度」

不確実性の回避が高い国・人の特徴

  • 不確実性を脅威とし、それを取り除くために形式、ルール、規則が必要とされ、構造化された環境を求める
  • ストレスが高く、不安感がある
  • トップマネジメントは日々のオペレーションにフォーカス
  • 医師や弁護士など、専門家を信頼する傾向がある
  • 学生は「正しい答え」を求め、教師がすべての回答を示すことを期待する

不確実性の回避が高い人は、予測不可能性を高めれば不確実性を回避できると考えます。予想外の出来事に不安やストレスを感じやすい傾向があります。
予測不可能性を高めるために、この傾向が高い国は、成文化された規則や制度、慣習的な規則が多々あります。

不確実性の回避が低い国・人の特徴

  • 人生とは不確実なものとして、ルールや形式、構造にはこだわらない
  • ストレスが低く不安感もそれほどない
  • 専門家や学者より、常識や実務家を信頼する傾向がある
  • 学生は学習のプロセスを求め、教師が「わからない」と答えても気にしない

不確実性の回避が低い人は、未知の体験であっても、リスクの度合いがわからなくてもとにかくやってみようと考える傾向があります。成功するためにリスクをとり、失敗を恐れません。
また、不確実性や曖昧さに直面しても不安やストレスを感じません。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。日本は「92」。
世界一の鉄道発着率を誇る日本は、世界的にかなり不確実性の回避が高いといえます。自然災害が多いことから、自然への諦観がある一方、準備をしておこうとする気持ちが刷り込まれているのです。
前例を重視し、変革が起こりづらいこともこの傾向が影響しています。
不確実性の回避が低い国は、失敗を織り込んだうえで、スピード優先でプロジェクトを進める傾向があります。一方、不確実性の回避が高い国は、検討と準備を重ね、失敗しないかたちで物事を進める傾向があります。
どちらが優れているということはなく、それぞれの文化圏に合うかたちでアプローチすることが大切です。

04

生活の質志向(女性性)・達成志向(男性性)

生活の質志向・達成志向とは、目標達成を重視する程度

達成志向・生活の質志向とは、競争社会のなかで、家族や友人など大事な人と一緒にいる時間を大切にするか、それとも成功することや地位を得ることを大切にするかを表すものです。
ホフステード博士は、「生活の質を重視するか、競争原理における成功や地位を重視するか」という次元で表しました。

達成志向の国・人の特徴

  • 業績主義社会が理想で、強い者や秀でた者が支持される
  • 欠点の修正を求める社会
  • 働くために生きる、仕事は人生にとって重要な要素
  • 女の子は泣いてもいいが、男の子は泣いてはいけない
  • 女性の美の理想は、メディアや有名人に影響される

達成志向の高い人は、社会的に成功することを重視します。目標は必ず達成すべきと考え、周りにも絶え間ない努力を求めます。

生活の質志向の国・人の特徴

  • 福祉社会が理想で、貧しい人や弱い人を助ける
  • 寛容な社会
  • 生きるために働く
  • 男の子も女の子も泣いていいが、喧嘩してはいけない
  • 女性の美の理想は、両親に影響される

生活の質志向の人は、目標は全体の方向を示すために必要だが、必ずしも達成しなくてよいと捉えています。成功に執着するよりも、大切な人と一緒にいる時間を重視し、思いやりをもって生きるべきという価値観をもっています。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。日本は「95」。
日本は、達成志向のスコアが最も高い国で、自ら課した目標に向かって道を極めていく特徴があります。
目標達成のためにはハードワークを厭わず、家庭を犠牲にすることもあります。
一方、生活の質志向の国では長時間労働やハードワークを嫌う人が多い傾向があります。これらの国と働く場合には、社員とその家族が幸せになれる環境づくりを行うことが大切です。

05

短期志向・長期志向

短期志向・長期志向とは、過去・現在・未来の捉え方

短期志向・長期志向とは将来に対してどのように考えるかを表すものです。
ホフステード博士と共同研究者のボンド博士は、現在と過去の基準のなかで物事を図る短期志向と、未来と持続性のなかで物事を図る長期志向をひとつの次元として表しました。
短期志向の国は目の前の事象にフォーカスして物事を進めていく傾向があり、長期志向の国は全体像を把握してから物事を進めていく傾向があります。

短期志向の国・人の特徴

  • 消費をすることへの圧力が強い社会
  • すぐに結果に結びつく努力をする
  • 余暇は重要
  • 最終損益に焦点がおかれ、四半期・当年の利益を重視
  • 自己を単一の自由な主体として考えるので、思考が分析的でまずポイントを理解する

短期志向の人は、努力はすぐに結果に結びつかなくてはいけないと考えます。
また、自国へのプライドがあると同時に、善悪の普遍的な指針があり、真実はたった1つと考えます。

長期志向の国・人の特徴

  • 資源を節約して倹約を心掛ける
  • 結果が出るまで辛抱強く努力する
  • 余暇を重視しない
  • 市場での地位に焦点が置かれ、将来の成長・利益を重視する
  • 自己を大きな全体のなかの一部と考え、思考が統合的で、全体像を把握してからポイントに向かう

長期志向の人は、将来成功するために教育に投資し、他者から学ぶ姿勢があります。仕事はハードで勤勉、結果が出るまで粘り強く努力します。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。日本は「88」。
日本は、韓国、台湾に続いて長期志向が高い国です。さらに、達成志向のスコアも高いことから、継続的な粘り強い努力をします。
松下幸之助氏や豊田章男氏、鳥井信治郎氏など、日本の代表的な経営者は、10年、20年、さらに250年という長期スパンで壮大なビジョンを掲げてきました。
かつて日本企業は当面の利益を犠牲にしても長期的な成功を見据えてビジネスを展開することで知られ、短期的な成果を求めるアメリカの経営者と対立することが多々ありました。
短期志向の高い国と仕事をする場合には、一人ひとりと対話しながら全体像を把握していくとよいでしょう。

06

抑制的・充足的

抑制的・充足的とは、人生の楽しみ方

抑制的・充足的とは、浪費や趣味は悪いと考え人の行動が制限されたしたネガティブな社会か、自由で楽しい活動にふけってもよいというポジティブな社会か、という捉え方です。
ハンガリー出身の異文化理解と組織行動の研究者マイケル・ミンコフ博士は、2013年版『多文化世界』で、新しい次元として以下のように定義しました。
抑制的な社会「人生を味わい楽しむことにかかわる人間の基本的かつ自然な欲求を比較的自由に満たそうとする社会」
充足的な社会「厳しい社会規範によって欲求の充足を抑え制限すべきだと考える社会」

抑制的な国・人の特徴

  • 幸せである、健康であると感じることが少ない
  • 肯定的な情動を思い出しにくく、悲観主義的
  • 自分に起こることは自分ではどうしようもできないと、無力感がある
  • 職場では、謹直で厳格な態度が信用され、プロフェッショナルであると受け取られる
  • 言論の自由は一般的な関心事ではない
  • 微笑みには疑惑の目を向けられる
  • 余暇はあまり重要ではない

抑制的な国は、「言論の自由の擁護」を国家にとって重要な目標とする割合が低くなります。
抑制的な人は、幸福感と健康観が高くないため、子どもを積極的につくろうとしない傾向があります。

充足的な国・人の特徴

  • 幸せである、健康であると感じる人が多い
  • 肯定的な情動を思い出しやすく、楽観主義的
  • 自分の人生はコントロールできると考えている
  • 言論の自由は比較的重視されている
  • 職場では、ポジティブシンキングが奨励される
  • 微笑みかけることが規範
  • 余暇は重要

権力格差の大きい人は、権力の不平等を当然のこととして受け入れています。ビジネスでは、リーダーは畏怖の念を使いこなすことが成功の鍵となります。

ではここで、日本のスコアを見てみましょう。日本は「42」。
93ヶ国中充足度合い49位とほぼ中間です。
「やることをやってから楽しもう」という考えの人が多いといえるでしょう。

ホフステード6次元モデルやCQについて
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