ホフステード理論とCQでひも解く:その①日本の高い「達成志向」

 

「働き方改革」によって、日本の長時間労働は改善しているのでしょうか?

実は20年前とあまり変わっていません。以下の表を見ると、一般労働者(パートタイム以外のフルタイム労働者のこと)の年間総労働時間は高止まりしています。

 

 

 

ちなみに海外と比較するとどうでしょうか?

日本「男性」の「有償労働」は世界で突出して長いと言えます。ただ、有償無償をあわせた労働時間は、長くはありますが同じような国がたくさんあります。

どういうことでしょうか? 日本男性は労働時間の9割を稼ぐ仕事につかっていて、1割を家事や育児という無償労働につかっています。ところが、他国では男女関わらず、3~5割の時間を無償労働につかっています。

この有償労働の割合の多さは「納期内にタスクを達成する」「家庭よりも仕事が優先される」というホフステード理論の「達成志向」を如実にあらわしています。

 

 

 

 

ホフステード理論とCQでひも解く:日本の高い「達成志向」

オランダの社会心理学者で「文化と経営の父」と呼ばれるヘールト・ホフステード博士は、長年の研究により「文化次元」という概念を生み出し、世界の文化を数値によって定量化しました。50年近くにわたり、様々な批判も受けながらも文化研究のスタンダードとして世界中の教育、経営、組織開発、人材開発など様々な場面で引用されています。

 

日本は、ホフステード6次元モデルのうち1次元の「達成志向」が世界で最も高い国です。この志向の特徴は「納期内にタスクを達成する」「家庭よりも仕事が優先される」というものです。
反対の「生活の質志向」の特徴は「金銭的報酬だけでない生活の質を向上させるインセンティブが望ましい」「家族の生活に配慮し、勤務時間は規則的」というものです。

長時間残業をしても業務を終わらせる、という志向が強い日本の国民文化が、働き方改革が進まない背景にあるのです。

 

 

 

それでは、達成志向でない国は、どのような働き方の国なのでしょうか?

 

 

生活の質志向の国スウェーデン

男性も女性も、毎日5時過ぎに帰ってきて家族揃って夕飯を食べます

最初の図を改めて見てみると、実はスウェーデンも、男女とも日本と同じくらい総労働時間は長いのです(480分超え)。しかし男性の総労働時間に占める有償労働時間は65%(日本92%)。
男性も女性も、毎日5時過ぎに帰ってきて家族揃って夕飯を食べ、食後も子どもとすごしたり家事をして過ごします。
時間あたりの労働生産性が高いことも特徴です。
もしも残業をしなければならないほどの業務がある場合は、それは会社組織の問題である、と考えるのが「当たり前」です。個人が残業してしまうと人材が補充されないので、残業をする人は白い目でみられるのです。
パパノミカタ「パパ育児先進国スウェーデンの子育て事情」参照)

日本人のあなたにとって、そんなスウェーデンの「当たり前」はどのようにみえたでしょうか?

 

CQ(異文化適応力)は、相対する次元の志向に橋をかける視点を提供しています

あなたにとってスウェーデン人の働き方は「向上心に欠ける」「できることを見せようとしない」と見えるかもしれません。スウェーデン人にとって、あなたは「自慢げ」「プライドが高い」と見えているかもしれません。
お互いにそのようなネガティブに見えることに気づいた上で、でもスウェーデンの人はうまく妥協ができ、短い時間で成功することに価値をおいている、そのようなやりかたもある、と考えてアプローチすることで、一緒にいい仕事ができるかもしれません。

 

 

 

一般社団法人CQラボでは、文化的に多様な状況を最大限に活用するために、違いを超えて働き、関わるためのサービスを提供しています。
弊社代表の宮森は、国民文化6次元モデルを生み出したホフステード博士をはじめ米国CQセンターのディビッド・リバモア博士など、カルチャーに関する第一人者から直接学び、深い知見と多くの経験を持っています。

CQラボはカルチャーに関してトータルな学びを提供できる機関です。
個人向けの入門講座を3ヶ月に1度開催していますので、ぜひご参加ください。

(文:ホフステードCWQ認定アソシエイト 千木良直子)
一般社団法人CQラボ cqlab.com

 

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