不確実性の回避・受容の例 遅延証明書を発行する日本<6次元モデル⑪>

これまで、ホフステード6次元モデルについて説明してきました。
各次元スコアの違いによって、どのようなことが起こるのか、事例を紹介していきます。

不確実性の回避・受容とは、不確実なこと、曖昧なこと、未知の状況に対して、脅威を感じるか気にしないかを表すものです。
次元の詳細はこちらをご覧ください。

遅延証明書を発行する日本

初の海外アサインメントとしてイギリスの事業部に初出勤した、日本人の宮田さん。
宮田さんが滞在するロンドンから事業部までは電車で1時間半程度。余裕をもって早めに家を出たが、突然電車が止まり、一度アナウンスはあったものの15分間ただ止まったままだ。
焦った宮田さんは、車掌に「あとどのくらいで動き出すか?」と尋ねるが、「わからない」と言われるばかり。
周りを見ても、焦っているのは自分だけだ。
宮田さんは上司に「電車が止まっているので遅れます。申し訳ありません」と連絡したところ、「Take it easy! イギリスの鉄道は日本ほど優秀じゃないから気にしないで」と軽く返され、拍子抜けしてしまった。
駅に着いた宮田さんが、「遅延証明書をください」と言っても、駅員はなんだかわからない様子。
遅延証明書について説明すると、「そんな証明書を出していたら、この駅の紙を使い果たしてしまう。イギリスにはそんなものは存在しない、会社も求めていない」と、駅員は笑いながら言うのです。

『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』
宮森千嘉子/宮林隆吉 著

世界一不確実性の回避が高い日本を、ホフステード6次元モデルから見る

日本の鉄道は、世界一の発着率を誇ります。トラブルは通勤・通学の大敵だと考える人が多く、少しでも遅延すると、理由を丁寧に説明し、遅延証明書を発行します。

不確実性の回避が高い日本では、予測可能性を高めようとします。不確実なことに人々は不安やストレスを感じるため、ルールや約束事を感情的に必要としているからです。

一方のイギリスは、不確実性の受容が高い国です。
電車が定刻通りに運航したらラッキーで、1時間遅れてはじめて「申し訳ありません」とアナウンスされます。
不確実性に直面しても不安やストレスを感じず、リラックスしているのです。

ホフステードの6次元モデルについてもっと詳しく知りたい方は、『多文化世界 違いを学び未来への道を探る [原書第3版]G.ホフステード/G.J.ホフステード/M.ミンコフ 著 岩井八郎/岩井紀子 翻訳、『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』宮森千嘉子/宮林隆吉 著 をご覧ください。

一般社団法人CQラボは、ホフステードCWQの日本オフィシャルパートナーとして、カルチャーに関してトータルな学びを提供しています。CQ®(Cultural Intelligence)とは…「様々な文化的背景の中で、効果的に協働し成果を出す力」のこと。CQは21世紀を生き抜く本質的なスキルです。Googleやスターバックス、コカコーラ、米軍、ハーバード大学、英国のNHS(​​​​国民保険サービス)など、世界のトップ企業や政府/教育機関がCQ研修を取り入れ、活用されています。

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