【CQ(文化の知能指数)第一人者デイビット・リバモア博士 来日記念講演】経営層のリアルに応えるCQ実践Q&A:多様性を力に変える組織づくり
2025年7月24日、CQの世界的第一人者であるDavid Livermore博士とCQラボ代表でアイディール・リーダーズ CCOの宮森千嘉子が、特別講演「組織文化が未来を拓く “違い”をパワーに変えるリーダーシップとは」を行いました。
講演では、日本企業における実践知を交えながら、組織文化を経営戦略とリンクさせるヒントをお伝えしました。講演参加者である、経営者や人事担当者からの質疑応答の一部をご紹介します。皆さまの組織の悩みを解決することに活用いただければと思います。
Q1:大企業でCQを育むには、経営陣だけでなく現場リーダーの振る舞いが鍵。ミドルマネジメントが取り組みやすい最初の一歩は?
David Livermore
経営層がCQを採用した後、実際にCQドリブンな組織になるかは中間層次第です。
経営層は認識のズレや、率直すぎる・わかりにくい振る舞いなどの現場課題に日常的には関わりません。
直面するのはミドルの皆さんです。
だから、モデルを教えるだけでなく、1on1、評価面談、会議運営でCQをどう使うかを、実務に直結する形で訓練することが重要です。
ミドルが知りたいのは「明日、難しい部下にどう向き合うか」です。実践的・戦術的な内容を教えると良いでしょう。
宮森
困難な状況であるほど、「なぜこの人はそう言うのか」と好奇心を持ってください。状況を中立に観る視点が大切です。
向き合うのがつらいと感じるのは自然ですが、中間層全体で向き合えるようにするには、まず「人はみな違う」ことを前提にしましょう。合意できないこともあります。それでも相手への接し方を工夫すると、新しい側面が見えてきます。
これは私がCQで培ってきた力で、人生を豊かにしてくれました。
CQストラテジーは「メタ認知」です。この概念が日本で注目される前から、私たちはそう教えてきました。
Q2:CQを有するリーダー候補を見極める有効な問いは?
David Livermore
アセスメントで測る4能力は見極めにも使えます。 単に「異文化に関心があるか」ではなく、「どんなグローバル経験をし、どう感じ、どう意味づけたか」を聞きます。
知識面では状況を提示し、何が文化的ダイナミクスかを問う。
特に重要なのはCQストラテジー=メタ認知です。
すぐステレオタイプに陥らず、理解しようとするかどうかに注目します。
私がよく聞くのは、「以前はそう信じていたが、今は違うことは?」という問いです。宗教に限りません。エンジニア観やZ世代観などでも構いません。何も出てこないなら、私は少し心配です。
宮森
大前提として、CQは誰でも伸ばせる能力です。そのため最初の「CQドライブ(動機・意欲)」が重要です。
問いかけとしては、「あなたがその立場なら何を考えるか」。これは パースペクティブ・テイキング の力を見ます。
David Livermore
ある日本の大企業が、サブサハラ・アフリカへの派遣人選をする際、アセスメント活用を検討しました。結論は、CQドライブ最重視。
CQナレッジ(知識)・CQストラテジー(戦略)・CQアクション(行動)は支援できますが、そもそもの動機・意欲が中程度未満なら派遣は推奨しません。
宮森
赴任者選抜では英語力や実績が重視されがちです。しかしそれと同等以上に、視点を切り替えられるか、 新しいものへ関心を持ち続けられるか、そして自分をメタ的に整えられるかが鍵です。
この問いは結局、自分自身にも返ってきます。毎日、自分に問うことが大切です。

Q3:M&Aや中途採用で組織人材の多様性が増す中、トップの思いを中期経営計画として丁寧に伝えるには、CQをどう応用するのが有効?
David Livermore
ある日本企業が米国企業を買収する例では、「日本の伝統を守りつつ、どうグローバル化するか」が論点でした。
CQを使い、日本の伝統を共有しつつ、各国からジョインした人の文化も話し合う場を設けました。
鮮明に覚えているのはアメリカの家庭向けロボットメーカーと日本企業のM&Aの事例です。双方の経営陣が象徴的な体験をしました。ボストン側は富士山で3日間、日本文化を体験し、日本側はボストンでフリーダムトレイルを歩きました。文化を競わせず、共に時間を過ごすことで強い絆が生まれ、研修以上の効果がありました。
宮森
「4つのコンピテンシーのどれに注力すべきか」はケースによります。
個人差があるため、アセスメントを用いて個別最適化を目指すと良いでしょう。
組織レベルでは、ドライブ→ナレッジ→ストラテジー→アクションの順が基本です。しかし、日本では知識を深めることでドライブが高まるケースもあります。価値観の言語化が動機づけにつながるためです。
M&Aでは時間がかかります。トップの発信に加え、国横断の共創プロジェクトを立ち上げ、一緒に働く経験を意図的に増やすことが重要です。
Q4:共通価値を大切にしつつ、多様な価値観の人材を活かすには?
David Livermore
強い組織文化は「多様な表現を許す価値」を持つこと。
たとえば「リスペクト」を掲げても、リスペクトの行動は文化によって異なります。価値は守り、行動は可変にする。
倫理のように一線を定める領域もありますが、基本は「同じ価値、異なる行動様式」です。
宮森
人は皆違いますが、一人では生きられません。「ゆるくつながる」ことで両立できます。
同じ目標に向かっていても、登り方は多様で良いと考えるのです。 道まで一つにすると窮屈になります。
多様性を活かしつつ、カオスにしない。それを設計できるのがCQの高いリーダーです。
Q5:心理的安全性におけるリスクある発言と、知的誠実性による率直さ。どこが違う?
David Livermore
元来の心理的安全性は「安心して意見を言える」ことでしたが、いつの間にか「反論してはいけない」に解釈がずれたため、知的誠実性を補正軸として導入しました。同じ方向を向きつつ、強調点が異なる概念です。
米国でも地域で直截さが違います。東海岸は率直、中西部は丁寧、南カリフォルニアは中間です。知的誠実性を抑えるのではなく、最良の結果を生む行動を選ぶことが大切です。
宮森
状況に応じた「言い方の引き出し」を増やしましょう。
私は元々得意ではありませんでしたが、日々の訓練で楽にできるようになりました。
難しさに固執せず、好奇心を忘れないこと。入院時も、医師の言動の違いを観察し、「自分も医療チームの一員として見てください」と伝え続けたら、壁が下がりました。
この面でも、メタ認知を持つことが大切なのです。

今回の講演後の質疑応答では、経営層やミドルマネジメントが実際に直面する“リアルな悩み”が率直に共有され、CQの実務への活かし方がより立体的に浮かび上がりました。
M&Aや多様化が進む中、価値観の違いは摩擦にもなりますが、見方を変えれば組織を前進させる力にもなります。
CQは特別な才能ではなく、誰もが伸ばせる能力です。観察し、問いを立て、視点を切り替えるという小さな実践が、明日の対話や判断を確実に変えていきます。
この記事が、みなさまの現場にある迷いを解きほぐし、新しい一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
一般社団法人CQラボは、ホフステードCWQの日本オフィシャルパートナーとして、カルチャーに関してトータルな学びを提供しています。CQ®(Cultural Intelligence)とは…「様々な文化的背景の中で、効果的に協働し成果を出す力」のこと。CQは21世紀を生き抜く本質的なスキルです。Googleやスターバックス、コカコーラ、米軍、ハーバード大学、英国のNHS(国民保険サービス)など、世界のトップ企業や政府/教育機関がCQ研修を取り入れ、活用されています。
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