権力格差の例 サウジアラビアでの記者会見<6次元モデル⑧>

これまで、ホフステード6次元モデルについて説明してきました。
これらの次元の違いによって、どのようなことが起こるのか、事例を紹介していきます。

権力格差とは、権力の低い人が階層と平等のどちらを重視するかです。
次元の詳細はこちらをご覧ください。

 

サウジアラビアでの記者会見

 

あるグローバル製造業の広報担当者は、中東の同僚からの依頼でサウジアラビアへのメディアツアーを準備していました。
サウジアラビア政府は2030年までにGDPランキングで世界10位を目指す「Saudi Vision 2030」を発表して世間からの注目を集めており、強いパイプをアピールすることは重要でした。
通常、ジャーナリストは企業広報によるツアーは好みませんが、ビザの取得やロイヤルファミリーへのインタビューの機会を得ることの難しさから、アメリカ、ドイツ、スペイン、フィンランド、日本から10人が参加しました。
当日の登壇者である、1人の王子への自由質問をしてよいという許諾も、同僚を通して政府広報担当から得ていて、それはツアーのハイライトでした。
イベント当日、王子は50人の従者とともに現れ、15分ほどのスピーチをしました。しかし、スピーチ後にジャーナリストたちが質問を開始すると、なんと王子は「答えるつもりはない」と言い残し、退室してしまったのです。
ジャーナリストたちは怒りましたが、政府広報担当も同僚も「王子のなさることはいつも正しい」と平然と述べました。

『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』
宮森千嘉子/宮林隆吉 著

 

ホフステード6次元モデルから見る、権力格差

サウジアラビアの事例を本当に理解するためには、権力との向き合い方が文化圏によって異なることを知らなければなりません。それが「権力格差」の次元です。

サウジアラビアは権力格差が世界で2番目に大きい国です。
権力の不平等は当然のこととして受け入れられ、社会的ランクの高い人とそうでない人は平等ではありません。

上司、教師、政治家などは、常に正しい回答を知っている、優れた人物であると考えられています。
ですから、この王子が言うことも「正しいこと」なのです。

 

ホフステードの6次元モデルについてもっと詳しく知りたい方は、『多文化世界 違いを学び未来への道を探る [原書第3版]G.ホフステード/G.J.ホフステード/M.ミンコフ 著 岩井八郎/岩井紀子 翻訳、『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』宮森千嘉子/宮林隆吉 著 をご覧ください。

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